3)乾癬と日常生活

■皮膚への刺激(ケブネル現象)
乾癬の患者は、乾癬がない皮膚を引っかいたり傷をつけたりすると、しばらくして、そこに新しい乾癬ができることがあります。これをケブネル現象と呼んでいます。
傷以外にも衣服、靴、メガネなどとの摩擦、やけど、虫刺されなどで乾癬が悪化することがあります。日常生活の中で、皮膚への刺激はなるべく少なくするように注意しましょう。

■日光浴
紫外線は乾癬の炎症をやわらげたり、皮膚の新陳代謝を抑える作用があります。また、紫外線は体の中で活性型ビタミンDを作るのに必要なものです。活性型ビタミンDは乾癬の皮膚を正常に戻す作用があり、治療薬としても使われています。
日光浴は気持ちを穏やかにさせるリラックス効果もあるので、乾癬患者には大切な習慣です。ただし、日光を強く浴びすぎるとかえって悪化の原因になることがあります。日光浴は医師に相談して行うようにしましょう。

■メタボと乾癬
メタボリックシンドロームは、腹囲、血糖値、血圧、中性脂肪値が一定の基準を満たしている状態ですが、乾癬患者はメタボの人が多い傾向があります。また、肥満は乾癬の皮膚症状や関節炎を重症化させたり、肥満があるとさまざまな治療が効きにくくなるということも分かっています。
乾癬の患者はメタボにならない食生活、日常生活に心がけることが大切です。

■お酒とタバコ
乾癬の患者は普通より飲酒量が多いというデータもあるそうですが、お酒と乾癬に関する明確な研究はありません。ただし、乾癬と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とには大きな関係があることが分かっています。重症な乾癬で脂肪肝があって、内科の先生に飲酒量を控えないといけないよと言われている患者は、お酒の量を抑える必要があります。
タバコを吸う人、とくに喫煙歴が長く、本数が多いほど乾癬になりやすいというデータがあり、タバコは乾癬の引き金になりうることがわかっています。また、タバコを吸っていると、治療効果が低下するかもしれない、重症化するかもしれない、という報告も出てきています。タバコを吸っている患者は禁煙しましょう。

■ストレス
アンケート結果などから、ストレスは乾癬悪化の原因と考えられています。日常生活の中でストレスを完全に無くすることは困難ですが、散歩をしたり、お風呂にゆっくり入ったっり、ゆとりがもてる毎日を送るように心がけましょう。

■乾癬の併存症
欧米の研究では、不安神経症が3割、うつ病、高血圧が2割、肥満、心血管疾患が1割程度と報告されています。日本の研究でも、やはり乾癬患者は糖尿病、高血圧、脂質異常の人が多いとされており、冠動脈の異常、心筋梗塞が多い傾向が指摘されています。
乾癬と脂肪細胞は関係しています。脂肪細胞は単にエネルギーの貯蓄庫だと思われていたのですが、最近は様々なタンパク質(アディポカイン)を出して、免疫力に影響していることが分かってきました。アディポカインには善玉と悪玉があって、善玉は2型糖尿病の原因であるインスリン抵抗性を抑えくれますが、悪玉(TNFα、レプチン、レジスチン)はインスリン抵抗性を進めます。肥満やメタボなどで内臓脂肪が増えると、善玉が減って悪玉が多くなります。残念ながら乾癬の患者さんは、善玉が下がって悪玉が上がっているということが分かっています。

■乾癬と妊娠、出産
乾癬があるからといって、妊娠しにくい、あるいは流産、早産しやすいということはないので、安心してください。また、妊娠すると乾癬はどちらかというとよくなる傾向があるとされていますし、悪化するとしても大幅に悪くなることは少ないとされています。ただ、膿疱性乾癬の場合は、悪くなることがあります。妊娠中も外用治療は継続できますし、ナローバンドUVBなら光線療法も可能です。飲み薬、生物学的製剤による治療は一般的には妊娠中は行いませんが、重症な患者さんでは行うこともありますので、主治医とよく相談してください。

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