2)乾癬の治療方法

■外用療法(ぬり薬)
乾癬治療の基本となるのが外用療法(ぬり薬)です。皮膚や発疹に直接ぬることにより効果を発揮します。主に使う薬剤はステロイドと活性型ビタミンD3です。炎症を抑えるステロイドは即効性があって、痒みにも効果がある外用薬ですが、長期連用には向きません。表皮細胞の増殖を抑制する活性型ビタミンD3は、即効性はありませんが、副作用がなくいったん良くなると再発までの期間が長いという特長があります。また、活性型ビタミンD3は治ったところに塗っておくと、新しい乾癬の皮疹が出にくいという臨床結果があり、ブレーキ役を高める効果も認められています。

ステロイドと活性型ビタミンD3は、それぞれ長所、短所があり、よくうさぎ(効き始めが早いが効果切れも早い)と亀(効き始めが遅いが効果が持続しやすい)に例えられますが、2つの薬剤の合剤が使えるようになり、高い効果が認められています。
なお、外用薬には製剤の形として、軟膏やクリーム、ローションなどの種類があり、使用する部位に適した剤形を選ぶことができます。

 
ステロイドと活性型ビタミンD3の合剤(商品名:ドボベット®、マーデュオックス®)

■光線療法(紫外線照射)
紫外線を皮膚や発疹に直接照射する治療法です。PUVA(プーバ)療法は、光に対する感受性を高める薬を内服あるいは外用し、長波長紫外線(UVA)を照射する治療です。照射直前に薬剤の入ったお風呂に入る入浴PUVAという方法も一部で行われています。

2008年からナローバンドUVB(中波長紫外線)という限られた波長の紫外線が使えるようになり、現在ではこれが光線療法の中心になっています。照射装置としては、全身型、かまぼこ型、フライパン型、手足型などのタイプがあり、また、狭い範囲を集中的に治療するターゲット型(エキシマライトやターナブ)も普及しており、治りにくいスネや爪の乾癬に効果を上げています。

光線療法はよく効く人とあまり効かない人がいますが、乾癬のアクセルを抑える効果とブレーキを高める両方の効果が認められており、よく効くタイプの人は一度きれいになると、それ以降は照射しなくても、1年以上乾癬の皮疹が出てこないということもあります。

■内服療法(のみ薬)
乾癬の発疹が中等症から重症になった場合は、内服薬(のみ薬)が用いられます。内服薬治療は外用療法や光線療法と併用される場合もあります。

・エトレチナート(商品名:チガソン®)
ビタミンA誘導体(レチノイド)で、皮膚細胞の異常増殖を抑える働きがあります。高い効果が期待できますが、皮膚や粘膜に副作用を起こすことがあります。また、催奇形性があり、内服中止後も女性は2年、男性は半年の避妊が必要です。
・シクロスポリン(商品名:ネオーラル®)
免疫を抑制する作用があります。高い効果が期待できますが、血圧の上昇や腎臓の障害などの副作用に注意しなければなりません。服用中は定期的な検査が必要です。
・メトトレキサート(MTX;商品名:リウマトレックス®、メトトレキサート®)

抗がん剤または抗リウマチ薬として使用される薬です。関節リウマチ類縁疾患としての関節症性乾癬の治療に用いられることがあります。他には生物学的製剤の効果を長期に維持する役割も果たせます。例えば、インフリキシマブ(レミケード®)に対して中和抗体産生が起こると時間経過とともに効果が減弱することがありますが、メトトレキサートはこの抗体産生を抑制することから、インフリキシマブと併用すると、効果減弱のリスクが減り、効果が長期に維持されやすいとされています。肝臓障害、間質性肺炎、骨髄抑制(白血球数などが低下する現象)に注意が必要です。わが国では、現在のところ乾癬には保険適応がありません。

■生物学的製剤(注射)
生物学的製剤は、遺伝子組み換え技術を使って人工的に作られたタンパク質製剤です。体内で分泌される特定の分子を標的とするため、肝障害とか腎障害は起こりにくい一方、免疫を抑える作用があるため、感染症に気をつけながら使っていく必要があります。

2010年以降、いくつかの製剤が使えるようになり、尋常性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に劇的な効果を上げています。いずれも注射薬ですが、投与間隔は薬剤によって異なります。

・インフリキシマブ(商品名:レミケード®)
・アダリムマブ(商品名:ヒュミラ®)
・ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ®)
・セクキヌマブ(商品名:コセンティクス®)
・イキセキズマブ(商品名:トルツ®)
・ブロダルマブ(商品名:ルミセフ®)
なお、生物学的製剤は高価な薬剤で、高額療養費制度が利用出来る場合もあります。


飯塚一:乾癬治療のピラミッド計画、日本皮膚科学会雑誌116巻9号より

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