1)乾癬とは?

■乾癬はどんな病気?

乾癬は、皮膚が赤くなって(紅斑)盛り上がり(肥厚、浸潤)、表面に白いかさぶたのような皮膚片(鱗屑(りんせつ))ができる病気です。乾癬の皮疹はどこにでも出てきますが、頭、肘、膝などの外的刺激や伸展刺激が加わるところによく出てきます。頭では鱗屑(りんせつ)がフケとなってたくさん落ちてきます。脂漏性皮膚炎という別の皮膚病と区別がつきにくいため,最初は脂漏性皮膚炎と診断される患者も多いようです。

  

乾癬は爪にも変化が現れやすく、爪が点状に凹んだり、濁ったり、はがれて浮き上がったり、厚くなったりします。これらの症状は爪白癬(水虫)に似ているためよく間違えられます。

痒みに関しては個人差があり、強く痒みを感じる患者もいれば、あまり痒みを伴わない患者もいます。

乾癬の原因は完全には解明されていませんが、免疫が関係していて、遺伝的な素因に、ストレス、食生活、外的刺激などの環境因子が誘因となって発症します。乾癬はうつる病気ではありません。

■乾癬のタイプは5つ

  • 尋常性乾癬 :鱗屑(りんせつ)を伴う隆起した大小の赤い斑ができるもので、乾癬全体の86%です。
  • 急性滴状乾癬:風邪などの感染症が引き金になって、1cm程度までの大きさの皮疹が多発します。小児に多く、感染症が治るとしばらくして皮疹も消える場合もあれば、そのまま尋常性乾癬に移行する場合もあります。乾癬全体の3%位です。
  • 乾癬性紅皮症:乾癬をこじらすなどして全身の皮膚の90%以上に皮疹が広がり、体全体が真っ赤になった状態です。乾癬全体の1.5%位です。
  • 乾癬性関節炎:皮膚症状に加え、関節に痛みや変形が現れます。関節リウマチに似ていますが、血液検査でリウマチ因子が陰性の場合がほとんどです。いろいろなタイプの関節症状がありますが、手指第1関節(末節骨)のところが腫れてくるのが最も特徴的です。中には関節リウマチのように2番目の関節が腫れたり、指全体が太く腫れたり、膝、肩などの大きい関節が痛くなることもあります。手指だけでなく、足の指(足趾)がソーセージ状に腫れることもあります。脊椎関節炎といって体軸から仙腸関節にかけて炎症が起きたり、あるいはムチランス型といって短期間で破壊が進むタイプもあります。乾癬全体のおおよそ10〜15%ぐらいと言われています。皮膚症状が先行した後に関節症状が出ることが多く(70〜80%)、その時間差は平均すると10年です。
  • 膿疱性乾癬 :カサカサした部分だけでなく、少しジクジクして真っ赤な部分が生じ、その中に膿疱(白または黄色い膿をもつ小さな発疹)ができます。発熱、むくみなどの症状が重く、関節炎を伴う場合もあります。多くの場合入院治療が必要となります。乾癬全体の1〜2%です。


乾癬性関節炎で変形した指(ムチランス)

 

■乾癬の皮膚では

皮膚の一番外側に厚さ0.2ミリの表皮という細胞層があります。その層の一番下にある基底細胞が分裂を繰り返し、最後は垢(あか)とかフケとして剥がれ落ちていきます。乾癬でない場合は、大体1カ月のサイクルで細胞が置き換わっています。

ところが乾癬の場合は、表皮の新陳代謝が活発となり、細胞が作られてからはがれ落ちるまで僅か4日という状態になっています。表皮の部分が非常に厚くなって盛り上がり、その下の血管が増えています。乾癬が赤くなるのは、表皮の下を通るたくさんの赤血球が透けて見えるからです。また、角化と言ってフケ(鱗屑(りんせつ))が厚くついています。


乾癬ハンドブックより

 

■免疫が暴走して炎症が起きている!

かつて乾癬は表皮の細胞だけに異常があるのだろうと考えられていましたが、今では炎症を引き起こす細胞(免疫細胞)にも大きな問題があることがわかってきました。つまり、別に黒幕の細胞が居て、どんどん増殖しろという指令を表皮基底細胞に出しているというわけです。

その黒幕が免疫細胞(T細胞、Th1細胞、Th17細胞、TIP-DC樹状細胞、マクロファージなど)です。本来は外敵から体を守ってくれる細胞ですが、標的がはっきりしないまま活性化して、次々と伝言ゲームのように指令を出します。その結果、基底細胞を増殖させて表皮が厚くなり、乾癬の病変が起きるのです。

表皮の細胞が出す物質が免疫細胞を活性化し、免疫細胞が出す物質の影響で基底細胞が増殖するという悪循環が暴走しているのが乾癬のメカニズムです。そして、この細胞から細胞に情報を伝える伝達物質(タンパク質)のうち、鍵になるものが3つあります。TNF-α、IL-17、IL-23です。これらを抑える治療薬として生物学的製剤が開発されています(レミケード®、ヒュミラ®、ステラーラ®、コセンティクス®、トルツ®、ルミセフ®)。


「瀧川雅浩,白濱茂穂:これでわかる乾癬の新しい治療,p.7,2011,南江堂」より許諾を得て改変し転載

 

■乾癬の患者数は?

人口に占める乾癬患者の割合は国や人種によって違います。デンマークは約3%、アメリカでは約2.5%です。白人系が多く、黒人系が少ない傾向にあります。世界的には、人口の1~2%、1億2,500万人が乾癬患者です。日本人はやや少なく0.1%~0.2%と推定されていますが、近年の研究では約55万人という報告もあります。

 

■乾癬は遺伝するの?

乾癬は、遺伝的な素因にストレス、食生活、外的刺激などの環境因子が誘因となり発症します。発症のきっかけは人によってそれぞれ異なります。

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